「気を付けよう」は何の安全対策にもならない
一昨年ロープ講習に行ったとき、印象に残ってる言葉があるんです。それは「確率が0%でない限り、必ず事故は起こる」っていうやつ。
確か福原講師が言ってた言葉だと思うんですけど、これが妙に頭に残りました。
(福原さんて、結構有名ですよね)
そうそう、これほんとにそうだよなって思ったんですよ。だから近い話だと、僕もフルハーネスの義務化には賛成なんです。確か来年からそうなるんですよね。具体的な日時は知らないんですけど。
日刊建設工業新聞 » 厚労省/フルハーネス型安全帯着用、5m程度以上で義務化/胴ベルト型は性能基準強化
4月1日からって噂は聞いてるんですが、これいいですよ。だってガラス屋で言えば、メインロープが切れたりして、ライフラインに宙吊りになる確率は0ではないですからね。
そうでない以上、バックアップを万全にするっていうのは大賛成です。安全帯じゃ何も防げないでしょう。
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んで、ちょっとここから話を広げたいんですけど、0%でない以上必ず事故は起こる。それを繰り返してれば、必ず起こるわけですよ。
宝くじの一等が当たる確率って何%なのか知りませんけど、毎回買ってればいつか当たるわけです。
普通はその前に死んじゃうから当たらないんですけど、寿命が1万年くらいの人が仮にいたとして、その人が毎回買ってたとしたら当たるでしょう。当たる確率は高い。
これを前提にして言いたいことはあれです。
「気を付けよう」は何の安全対策にもならない
ってこと。
よくあるじゃないですか。事故があったときに「気を付けよう」って言うこと。
自分が言ったことはなくても、他人に言われたことはあるでしょう。ガラス屋ならば誰でも。
でもこれって確率を0%にする対策ではないわけですよ。てか全然下がらない。
気を付けよう、つまりみんな注意していこうって意味ですが、こうやって人の注意力に頼ってる時点で、事故の確率は全然改善されません。
自動車事故がそれを物語ってますね。あれこそ典型的な「気を付けよう」ですから。
何か事故があったとき、「気を付けよう」で済ませてはいけないんですよ。そんなしょーもないこと言う暇があったら、仕組みレベルで変えなくてはいけません。
んでこの仕組みレベルで変えるっていうのを、いまいち理解してない人がいるので、ちょっと例を出しながら説明したいと思います。
(みんな分かってたらごめんよーw)
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ときにツムツムってゲームをご存知でしょうか?知ってても知らなくても問題ないんですけど、このゲームを例にして説明したいと思います。
このゲームはパズルゲームで、1プレイごとに制限時間があるんです。60秒っていう。
その時間内に高得点を出したり、多くのコインを稼いだりするんですけど、プレイ終了時に時間延長の表示が出るんですよ。ルビーを使って延長しますか?って表示が。
ゲーム内でルビーは貴重なので、基本的に延長するメリットのないケースがほとんどなんですけど、これ誤って延長してしまうことがあるんです。言わばツムツムにおける事故ですね。
ゲーム終了時に、早く次の画面に移動してほしいってことで、画面を連打してる人が多いと思うんですが、そんなときに何の前触れもなく、こんなポップアップが出るんで、思わずOKを押してしまうんですよ。
それで後悔の念を抱えたまま、延長戦に入った経験が、ツムツムユーザーならば誰でもあるでしょう。
これ、ツムツムユーザーならば分かると思いますが、やったことない人でもなんとなく分かりますよね?
ようは画面に出てくるOKボタンを、間違って押してしまう事故があるわけです。
さて、この事故を防ぐ対策って何でしょうか?OKボタンを押さないように気を付けようって対策は0点ですね。それだとまた必ず起こるから。
連打しないようにしようっていうのもナンセンス。多少誤タップの確率は下がりますけど、根本的な解決にはなりません。
ゲーム終了後に、OKボタンが出てくるだろう位置をタップしないようにするっていうのも同様ですね。これも根本的な解決策にはならないんですよ。
この場合の仕組みレベルでの解決策はあれ。
ルビーを持たないようにすること
延長にはルビーが5個必要なので、そもそも5個持ってなければOKボタンを押したとしても時間延長にはなりません。
時間延長を防ぐ解決策はいくつかあると思うんですけど、僕が今ぱっと思いつく解決策はこれですね。これならば理論上の数値は0になりますから。
(ルビーをコレクションするのが好きとか、どうしても持っておきたいとか、そういう要望を言うのはやめてくださいね。あくまでも時間延長を防ぐための仕組みレベルの解決策、その一例として提示してるだけですからw)
こんな風に解決すること。これが仕組みレベルでの事故対策でしょう。
全然余談ですけど、ツムツムの運営側がこの事故を防ごうと思ったら、二段階認証にすることが大事ですね。
OKボタンを押したあとで、「本当にいいんですか?」って表示を出すことです。これ事故率0にはならないですが、大幅に下がることは間違いない。
まあ運営側はそんなこと百も承知だと思うんで、今の事故を歓迎してるってことになりますねw
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さてさて、話をガラスに戻しましょう。ガラスで事故があったときも、出来る限り仕組みレベルで解決した方がいいと思います。解決出来ないケースも多々あるんですが、出来る限り仕組みレベルでの解決をするべきです。
思うにガラス屋さんて個々人の能力に頼るのが好きなんですよ。だってすぐに言うじゃないですか。腕が良いだの悪いだのって話を。
なんでだか腕が悪い人に限って、すぐに技術が〜とか、職人が〜みたいな話をするのは本当に謎なんですけど、まあそういう風潮はあるでしょう。
全然かっぱけないガラス屋が、技術どうこう言うのは滑稽で仕方ないんですけど、事故があったときだけは、その風潮をやめたほうがいいですね。
個々人の注意力、能力で解決しようとしても、その事故は必ずまた起こりますから。0%にならない限り。
そういう意味で言えば、「気を付けよう」と同じように「出入り禁止」も意味がないですね。
何か事故があったときに、その本人が出入り禁止になったってこと、あると思うんですよ。自分の会社でなくとも、話くらいは聞いたことがあるでしょう。
これもマジで意味ないんでよしたほうがいいですね。ガラスの内側をやってるときに、いきなりオフィスの真ん中でオシッコし始めたとか、そういうレベルの奇行でない限り意味がないでしょう。
その当事者でなくとも、同様の事故をやらかす確率が0でないのならば、出入り禁止も意味がないと言えます。
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さて、もう書きたいことは大体書いたんですけど、最後に言いたいのはあれです。「やっぱガラスって仕組み化出来ないことが多いよね」ってこと。
散々ぱら「仕組みレベルでの解決を〜」とか書いてきて、最後になんじゃいって思うかも知れないですけど、これは事実なんですよ。車の運転と同様に、個々人の注意力、判断力に依存しなくてはいけない仕組みになっています。今のガラス清掃ってやつは。
だからフルハーネスが導入されたり、何か新しい安全対策が導入されたりしても、事故はなくならないでしょう。今と同じように人間がやってる限りは。
だから本当に思うんですよ。早くロボット化されればいいのにって。
僕はガラスが好きです。青春の全てをこれに費やしましたし、なんなら休むのも嫌いだったし、会社から「明日休み」って言われるとキレてました。
んで、それでも休み確定だと、ノーギャラでよその会社の手伝いに行ってたんですよ。
まあ今でも好きですし、なんだかんだガラスの仕事がなくなったら生活ヤバイです。死にはしないですが生活レベルは落とさなければいけないでしょう。
でもそんな僕でも思う。ロボット化することがガラス業界にとって一番健全だって。
人が怖い思いをして危険な作業をすることって、不健全ですからね。そういう状況が早くなくなればいいなって思います。
車が自動運転になる未来って、もうそんなに遠くないところまできてるんですが、そういう社会が実現した場合、ガラス清掃も同様でしょう。
ロボットがどういう形になるか分からないし、それでも人がやる仕事は残ると思いますけど、徐々に進んでいきますよ。ロボット化は。必ず。
てか最近になってこれだけガラス屋が死んでるんだから、仮にロボットの方がコストが高かったとしても、それを良しとする世論になるでしょう。
ロボット化がいつになるか分からないですけど、僕はそれを歓迎してますね。
ロボットならばガラス屋の死亡事故も0になりますし。
今みたいに人がやってるうちは、その前提で仕組みをアップデートしていくべきでしょう。
「気を付けよう」は禁句ですよ。
「気を付けよう」は何の安全対策にもならない。
ってことに気を付けましょう。